館長だより 第135号
館長だより 第135号

館長のつぶやき(30)

2019/09/22

   ☆ 寄贈本 『「日本書紀」だけが教える ヤマト王権のはじまり』

 第88号で紹介した『邪馬台国は熊本にあった!』の著者、伊藤雅文さんが、再び新書本を出版した。

 『「日本書紀」だけが教える ヤマト王権のはじまり』(2019・扶桑社)である。

 この新書本を発行と同時の5月に、当館に寄贈していただいた。

 こころよりお礼を申し上げると共に、お礼が遅くなったことをお詫び申し上げる。

 本の帯に 初代天皇は301年に即位した!? とある。

 〈独自の紀年復元と中国・半島文献のクロスチェックでわが国の”源”を大胆に解明していく!

  知的好奇心を刺激してやまない歴史ミステリーへ ようこそ〉とキャプションが続く。

 伊藤氏のテーマへの取り組みのスタートは、初期の天皇が軒並み長寿である不自然さからである。

 初代の神武天皇の127歳から16代仁徳天皇87歳+αまでの16人中に100歳以上の天皇が11人いる。

 この非現実的な記述を、多くの研究者は意図的な創作としてほとんど無視をしている。

 伊藤氏はこの不自然さはどこからきているかを考える。

 まず、『日本書紀』で初期天皇のそれぞれの治世の事績を調べる。

 すると、何も記事が記されていない年が多過ぎることを見つける。

 記載のない年を「無事積年」と名付け、それを各天皇の治世期間から除去する。

 これを元に伊藤氏は「原日本紀年表」の作成を目指す。

 「人物画像鏡」銘文の新解釈、倭の五王の再比定、神功皇后の是正、などなどの考察、検証を重ねる。

 次々と現れる問題を独自の発想で解決していく伊藤氏に、シャーロックホームズを感じる。

 まるで、ベッド・ディテクティヴ・スタイルの歴史推理小説を読むようである。

 推理の道筋、たどり着いた結末は、読者自身の眼で確かめてほしい。


  挿図:『「日本書紀」だけが教える ヤマト王権のはじまり』(2019・扶桑社)の帯付き表紙。


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