館長だより 第129号
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館長のつぶやき(28)

2019/04/07

   ☆ 寄贈本 『倭の五王は誰か』

 3月24日に「邪馬台国の会」で、特別講師・伊藤友一氏の講演があった。

 演題は、「倭の五王とその前夜」である。

 講演のきっかけは、伊藤氏が自著『倭の五王は誰か』を安本先生に進呈されたことに始まる。

 安本先生は、既に『倭の五王の謎』(1981・講談社)を出版され、今回、新著『神功皇后と広開土王の激闘』を出版された。

 新著の中で、第V章に「「倭の五王」の時代―讃・珍・済・興・武はだれか」を書かれている。

 今回、安本先生は新著の内容について講演される。

 当然、神功皇后の子、孫の応神、仁徳にも、倭の五王にも触れる。

 伊藤氏の著作を読まれた安本先生は、伊藤氏が倭の五王問題を的確にまとめられ、独自の検証方法で考察されていることを評価された。

 そこで、安本先生から伊藤氏に講演を提案されたという。

 倭の五王が誰か、二人の見解は一部異なるが、扱っているテーマが同じである。

 この絶妙のタイミングが、伊藤氏の特別講演を実現したのではないかと思われる。

 もうその話を聞いただけで、「邪馬台国図書館」の蔵書にしなければと思う。

 厚かましくも、早速、伊藤氏にお願いをしたら、こころよく当館へ著作を寄贈して頂いた。

 こころより感謝申し上げる。


 伊藤氏の略歴を見ると、東京生まれで、早稲田大学卒とある。

 サラリーマン生活をリタイヤ後に、生き甲斐のひとつに古代史を選ぶ。

 その思いは年々深化して、『倭の五王は誰か』へと結実したという。

 著書の副題に 二大王家の並立と巨大古墳の被葬者 とある。

 帯には、 文献史料と古墳から「倭の五王」の謎に迫る! とある。

 伊藤氏の検証行程は以下のようである。

 まず、先人の五王比定説を調べ出し、その問題点を洗い出す。

 『宋書』と『梁書』における倭の五王系譜の相違に着目して応神系・仁徳系二大王家の並立を見つける。

 「倭の五王」比定は、『宋書』の絶対年代を決め手として行なう。

 候補の天皇の陵墓がどれか、模索する。

 現在治定されている天皇陵は疑問が多いので、独自に治定し直す。

 最後に、倭王武(雄略天皇)の治世下に日本の古代国家」の誕生を導き出す。

 皆さんに期待をもって読んでいただきたいので、伊藤氏の倭の五王比定は本書に譲る。

 「おわりに」で、伊藤氏はいう。

  〈魏志倭人伝に登場する邪馬台国は一体どこにあったのであろうか。
   大和王権誕生の経緯をみれば、邪馬台国も大和の地にあったと考えるのが自然ではある。
   しかし、魏志倭人伝に記されている銅鏡・鉄鏃・鉄剣・ガラスおよび翡翠勾玉等の
   出土状況では、北九州が圧倒的に有利な状況にある。
   この二つを如何に繋ぐのか、本当に繋ぐことができるのか。
   即ち、邪馬台国の所在地はどこにあったのか、大和王権とどう結びつけることができるのか。
   いよいよ残された謎に取り組まなければならない。〉

 伊藤氏の次の著作が楽しみである。


  挿図:伊藤友一『倭の五王は誰か ― 二大王家の並立と巨大古墳の被葬者』(2017・東京図書出版)の表紙、帯付き


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