館長だより 第130号
館長だより 第130号

安本作品 あれこれ(29)

2019/04/21

   ☆白熱講義対決! 安本美典vs.大塚初重

 徳間書店の発行本に「TOWN MOOK」がある。

 ムックとは、単発の雑誌であり、特別号や別冊号みたいなものである。

 TOWN MOOKには、「UFO」、「仮面ライダー」、「江戸古地図」、「日本の神社」などがあり、ジャンルに制限はない。

 そのなかに『邪馬台国の正体』(2013)がある。

 表紙には美形の卑弥呼が長野剛によって描かれている。

 表題のまわりに、卑弥呼の素顔はここまでわかった!、日本のかたちはこうして誕生した!などの文字が躍っている。

 書店で見かければ、手に取って見たくなる装丁である。

 巻頭の特集ページを開くと、監修/邪馬台国の会(会長・内野勝弘)とある。

 そして、第1部も第2部も内野会長の監修である。

 さすが!我が会の内野会長だけのことはある。

 我がことのようにうれしく、誇らしい。

 特集の内容を見ると、「白熱講義!邪馬台国 九州説の真実 邪馬台国は99.9%九州にあった! 安本美典」とある。

 続いて、「白熱講義!邪馬台国 畿内説の真実 邪馬台国の時代は集団の大移動が起きていた! 大塚初重」とある。

 二大巨頭の白熱対決である。


 安本先生は、考古学的に確実に出土した遺物のデータをベイズ統計学による計算式で分析をする。

 結果、「福岡県に邪馬台国があった確率は99.9%」を導き出す。

 箸墓古墳が卑弥呼の墓でない理由、卑弥呼は天照大御神である!と論を展開する。

 最後に、吉野ケ里遺跡よりも大規模な遺跡群の平塚川添遺跡を取り上げ、九州説を完結する。

 大塚先生は、考古学的に見直されている年代論を取り上げる。

 AMSによる年代測定法の結果、年代は従来よりも約50〜100年遡ると考えられる。

 よって、箸墓古墳は240〜260年ころと推定され、卑弥呼の時代に重なるとする。

 これで畿内説に決まりかというと、考古学的には決定的な発掘がないのが現状ともいう。

 三角縁神獣鏡は国産だった?、考古学では証明できない「邪馬台国東遷説」と論考を進める。

 最後に、大和政権は畿内に限らず、吉備・播磨・河内・摂津・山城・紀伊などもっと広範囲だったと推考する。


 今回の両先生の講義は、編集部によるインタビュー記事で、自説の発表で終わっている。

 次回があれば、是非とも二人が直接対面をして、討論を戦わして欲しいものである。


 「邪馬台国は99.9%九州にあった!」を以下に掲載する。

 【1 P12】  【2 P13】  【3 P14】  【4 P15】


  挿図上:『邪馬台国の正体』(2013・徳間書店[TOWN MOOK])の表紙

  挿図下:安本美典先生(左)と大塚初重先生(右)(『邪馬台国の正体』より作成)


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