前号(第107号)で紹介した寄贈本のなかに『日本語の起源』(1991・河出書房新社)がある。そこに安本作品が掲載されている。
「日本語の古層を統計的にさぐる」である。
巻末の出典一覧をみると、昭和62年(1987)7月、「言語」と記載されている。
該当雑誌をネットの書籍販売で探すと、『月刊言語』昭和62年7月号 大修館書店 特集・世界の敬語 とある。
目次の詳細がないので、ここに収録されているか不明である。
これとは別に、『月刊言語』 1987年別冊 創刊15周年記念
総合特集 日本語の古層−日本語はどこまで遡れるか という本もある。特集内容からみると、この別冊が安本作品収録している号かもしれない。
『月刊言語』は雑誌名のとおり言語に関する専門雑誌である。大修館書店から1972年4月に創刊され、2009年12月で休刊となっている。
専門雑誌の採算はむずかしいといわれ、休刊は残念である。
しかし、38年間、通巻461号はすばらしい実績と思われる。
『日本語の起源』には、安本作品のほかに11作品、対談などがある。「朝鮮語と日本語」(金 思Y)、「日本神話の系統について」(吉田敦彦)、
「日本語と韓語とはどんな関係にあるのか」(馬淵和夫)、「日本語系統論について」(田村すず子)などが収録されている。安本美典「日本語の古層を系統的にさぐる」は12節の見出しがある。
1 樹幹図モデルと河川図モデル
2 日本語の単語
3 基礎語彙選定の基準
4 弥生時代以来の五百の単語
5 「弥生時代の日本語」の名詞は、二シラブル語を基本とする
6 一音節語は、身体関連語に多い
7 一音節語は、植物の部分名に多い
8 一音節語は、数詞に多い
9 一音節語群が、日本列島へ来た時期はそれほど古くない
10 ビルマ系江南語の流入
11 ビルマ系諸言語と日本語との関係
12 おわりに本編の詳細は略すが、文末の「おわりに」を引用する。
〈歴史時代以前、ビルマ系江南語の流入よりもさらにまえに、古い時代の中国語、
クメール(カンボジア)系の言語、インドネシア系の言語などの流入があったと
みられる。そして、日本語の最古層として、日本語、朝鮮語、アイヌ語の三つの
言語の共通祖語ともいうべき、「古極東アジア語」の存在が推定される。(中略)
今回は、日本語の古層語のひとつ、「ビルマ系江南語」を、
よりはっきりとした形で、浮びあがらせようとした。〉挿図:『日本語の起源―ことば読本』(1991・河出書房新社)の表紙
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