館長だより 第90号
館長だより 第90号

館長の見聞録(39)

2016/10/02

   ☆ 山梨県立考古博物館と甲斐風土記の丘(その2)

 私が訪れた山梨県立考古博物館は、甲斐風土記の丘・曽根丘陵公園の中にある。

 博物館は公園内の北側にあり、南側に上の平遺跡の方形周溝墓群がある。

 ここからは、弥生時代終末から古墳時代初めにかけての方形周溝墓が125基見つかったという。

 現在、その大きさや位置を実際に見て歩けるように35基が保存されている。

 3基は復元され、溝の様子がよくわかる。

 他は、低木が植えられ、盛土の方形が立体的に表現されている。

 少し上から見渡せるように展望台がある。

 方形周溝墓は、溝を方形に掘って、その内部に土を盛り、その中央に埋葬施設を伴うものである。

 しかし、ここでは後世の開発により盛土は失われ、埋葬施設が確認されたものはないという。残念!

 方形周溝墓の大きさは、通常1辺が 5〜6mぐらいから20mぐらいのもので、多くは 10m内外という。

 ここ上の平方形周溝墓群でも10m内外のものが多いが、最大の1号方形周溝墓は、30m×23.5mの規模である。

 周溝からは高さが約80cmもある大型壺が出土している。

 墓の規模、埋納土器の大きさから、埋葬されている人物の権力の強さが想像される。

 方形周溝墓は集落と区域を分けて、集団で築かれている場合が多い。

 神奈川県の大塚遺跡(集落)と歳勝土遺跡(墓群)や千葉県大崎台遺跡(集落)と寺崎向原遺跡(墓群)などである。

 上の平遺跡にも北側に弥生時代の集落跡が確認された東山北遺跡がある。

 方形周溝墓が歳勝土遺跡では25基、寺崎向原遺跡では43基ある。

 上の平遺跡では125基である。非常に多い。

 しかも近接する宮の上遺跡、立石遺跡へも方形周溝墓が広がっていることがわかっているという。

 方形周溝墓の規模も数も桁外れで、東日本屈指の規模である。

 こんなに規模の大きい方形周溝墓群が見られるとは、思いもよらなかった。

 もっと、注目されていい遺跡である。

                                             (つづく)


  写真 11:公園南入口にある甲斐風土記の丘・曽根丘陵公園の石碑(館長撮影)

  写真 12:展望台からみた上の平遺跡の方形周溝墓群の現在の様子(館長撮影・写真3枚より合成)

  写真 13:上の平遺跡の1号方形周溝墓(館長撮影・写真2枚より合成)

  写真 14:1号方形周溝墓の周溝から出土の大型壺(山梨県埋蔵文化財センターHPより)


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