館長だより 第73号
館長だより 第73号

館長のおもいつき(18)

2015/05/10

   ☆ 「弩」について (7)考古遺物 その5

 前号では、愛知県西尾市清水遺跡の三稜鏃の実測図がなかった。

 正式な報告書には載っているはずなので、探してみる。

 清水遺跡を調べたら、山口県、長野県、静岡県などに同名の遺跡があることがわかった。

 発掘報告書を愛知県に絞ってみると、2冊出ている。

 ひとつは、愛知県埋蔵文化財センター・1991年発行の『清水遺跡』(愛知県埋蔵文化財せンター調査報告書 25)である。

 これは、ネット上に公開されているので、ダウンロードしてみる。

 弥生時代の遺物としては製塩土器しかない。

 青銅器製品の出土は報告されていない。

 報告書のもうひとつは、南山大学人類学博物館が1991年に発行している。

 『愛知県西尾市清水遺跡発掘資料報告』(人類学博物館紀要第13号)である。

 この本は、近くの図書館に無いし、県立図書館にも無い。

 ネットで売り物があるが、これに掲載されている保証はない。

 愛知県の清水遺跡の報告書がこの2冊しか出ていない保証もない。

 運を天に任せて購入をする。

 天は我を見放さず、というわけで三稜鏃の実測図が手に入った。

 写真もあるので、あらためて両方を掲載する。

 ≪有茎銅鏃。断面が三角形をなす特殊な形態。
  形態の特殊性を中山英司(1952年)も注目し、漢の三翼鏃と比較しているが、
  当資料は刃部、茎部とも細身で単純な三角形で直接対比できるものではない。
  紅村弘(1959年)によると古墳時代の資料と考えられる。≫

 ≪銅鏃。全長5.8cm 最大幅0.85cm 刃部長3.3cm 茎部長2.5cm
  断面三角形。錆びているが遺存状態は良好。≫

 報告には出土状況の記述はない。

 中山氏、紅村氏の見解の載っている参考文献は見ていないが、
 中山氏は三翼鏃ではなく、三稜鏃と比較すべきであるが、1952年当時では
 他の三稜鏃は報告されていないのでいたしかたない。

 紅村氏も現在の三稜鏃の出土報告を知れば、考えを変えられたかも知れない。

   (以下 次号)


  写真・挿図 33:清水遺跡・三稜鏃(1991『愛知県西尾市清水遺跡発掘資料報告』 より)


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