5月26日の産経新聞に日本考古学協会蔵書に関する記事が掲載された。見出しに「さまよえる考古学協会蔵書6万3000冊 ようやく安住の地 奈良大に寄贈」とある。
蔵書の保管料負担に苦慮していた協会の理事会が海外寄贈を決めたことに端を発した寄贈問題が一件落着したという。
平成21年8月の受け入れ先募集から数えて、4年9ヶ月目の決着である。
やっと奈良大学に引き受けてもらえたことは、他人事ながら一安心である。
協会蔵書が奈良大学にたどり着くまでの彷徨の顛末を記事は伝えている。
≪平成21年に寄贈先を公募した際には、国内からの応募がなく、
唯一名乗り出た英国のセインズベリー日本芸術研究所と22年に寄贈の覚書を交わした。
だが、文化遺産の海外流出を懸念する一部会員から反対運動が起こったため白紙撤回。
昨年、条件を緩和して再度公募したところ、国内の2機関から応募があり、
受け入れ体制や利用しやすさに勝る同大學図書館が選ばれた。≫これで、めでたし、めでたしでいいのであろうか。
反対運動の末、白紙撤回となった案件に対し、協会ではどんな話し合いがなされたのであろうか。
条件を緩和とはどういうことだろう。
受け入れ先探しのみに終始したのでないことを願いたい。
協会自身による活用は、どの程度検討されたのであろうか。
お荷物を手放すだけで解決なのであろうか。残念でならない。
日本考古学図書館の構想などはなかったのであろうか。
協会には、せっかくの珠玉を活かす才器は現れないのか。
日本の考古学界を代表する機関がこれではなさけない。
あとは奈良大学に期待をする他はない。
奈良大図書館については奈良新聞が詳しい。(2014.5.18)
≪図書館の蔵書は約45万冊で考古学分野の書籍も8万冊にも及ぶ。
今回の寄贈で14万冊を越え、全国屈指の情報の集積拠点になる。≫≪同大学は来年の学園創立90周年記念事業に位置づけて、
寄贈資料の目録作りやインターネットで検索できるシステム構築を実施。
図書館を一部改修して寄贈資料を公開するほか、遠方の閲覧希望者への複写サービスを検討している。
将来的には、特に貴重資料について電子化も計画している。≫奈良大学の図書館では学生や研究者だけでなく一般にも公開するという。
奈良大学の開かれた図書館がより一層の活躍をされ、貴重な書籍が研究に活かされることを祈って止まない。
写真 上:5月25日・26日にが駒澤大学で開催さた第79回日本考古学協会の総会のようす。
この総会で蔵書の寄贈先が会員に発表された。(ネット「黒く光る石と黒く動く虫」より)写真 下:寄贈を受ける奈良大学図書館のようす。
奈良大学の市川理事長(左)と千田学長(ネット「奈良新聞」より)
|