館長だより 第140号
館長だより 第140号

館長のつぶやき(35)

2020/04/12

   ☆ コミック誌に『卑弥呼』の連載

いま、世界では新型コロナウィルスの蔓延で、国からの緊急事態宣言もあり、外出もままならず鬱陶しい日が続いている。

そんな中で、コミック誌の『ビッグコミックオリジナル』(小学館)にある連載がひと時の楽しみを与えてくれる。

『卑弥呼ヒミコ―真説・邪馬台国伝』である。

作者はリチャード・ウー、画は中村真理子である。

リチャード・ウーとは、長崎尚志のペンネームである。

彼は小学館でコミック誌の編集に携わり、編集長を経て、いま『卑弥呼』の漫画原作者として活躍している。

中村真理子は美術大学卒業後、劇画村塾に入り、原作付きの作品を多数手がけている。

2001年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞している。

古代史漫画では、『天智と天武 -新説・日本書紀-』の作画を手掛けている。

二人の組み合わせは今回が初めてで、コミック誌の世界では最強のタッグとの呼び声もあるそうである。

日本の古代史では避けて通れない邪馬台国と女王卑弥呼の謎が、どのように描かれ、展開されているか。

古代史ファンには見逃せない大スペクタル作品との評判である。

本誌は5日と20日の月に2度の発行である。

連載の始まりは、2018.9.20号からである。

物語は、倭国大乱の時代、場所は日向(ヒムカ)から始まる。

主人公は日向の少女・ヤノハ。数奇な運命に翻弄され、日見子(ヒミコ)の座に就くという。

登場人物には、鞠智彦、イクメ、ミマアキ、イスズ、ミマト、ヌカデ、ヒルメ、モモソ、タケル王などがいる。

魏志倭人伝や記紀神話にありそうな雰囲気の名前である。

連載は縦横無尽に展開しながら現在進行中である。

いままでの掲載分が三冊の単行本で刊行されている。

それぞれの本の帯に紹介コピーがある。

第1集〈邪馬台国は実在したのか!? 伝説の女王は、衆を惑わす鬼女か!? 人を魅了する絶世の美女か!?
   未だ結論の出ぬ邪馬台国論争に、終止符が打たれるときが来た―!? 新説にして真説!!〉

第2集〈3世紀。倭の統一を目論む権力者たちの巨大な陰謀が渦巻く世―
   大乱の時代に君臨した卑弥呼は権謀術数の限りを尽くした血染めの女王だったのか!?〉

第3集〈嘘と欲望と殺戮と。魂が躍る異色の日本古代史!! 卑弥呼を殺めた女は、
   死ぬ運命か 偽の卑弥呼になる運命か!?〉

最近の2020.3.5号に書かれている「前号まで」のあらすじにはこうある。

〈倭国大乱の世。己の生き残りだけを欲するヤノハは、数奇の運命から日見子を演じることに。
 女王の地位を確立するために、山社(ヤマト)建国を提案。
 聖地・千穂(チホ)を手中に収めようとするも、千穂は鬼が支配する地だという。
 ヤノハは、鬼の正体を暴き、倒すと宣言。
 自ら生贄として儀式の場に潜り込み、鬼を降伏させたのだった。〉


この作品は邪馬台国と卑弥呼を基にしたエンターテイメントとしてとてもすばらしいと思う。

原作者のリチャード・ウーは、どこからこのストーリーを思い付いたのであろうか。

魏志倭人伝と記紀を読んだだけではとても難しい。

もしかしたら、中国の春秋戦国の時代を記した司馬遷の史記が影響しているかもしれない。

彼は、漫画の編集、脚色、プロデュースをこなし、その上映画の脚本、長編の小説も書き下ろしているという。

さすが、八面六臂の活躍をされる人はどこかが違う。

これからの「卑弥呼」の展開がとても愉しみである。


  挿図上:『卑弥呼 ヒミコ 第1集』(2019.4・小学館)の表紙。

  挿図中:『卑弥呼 ヒミコ 第2集』(2019.9・小学館)の表紙。

  挿図下:『卑弥呼 ヒミコ 第3集』(2020.2・小学館)の表紙。


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