『歴史読本』には、『別冊歴史読本』や『歴史読本特別増刊』という不定期号がある。両方とも、あるテーマに特化した本である。
『別冊歴史読本』では、織田信長、花の日本史、日本帝国最後の日、ナチスとユダヤなどの特集がみられる。
歴史というテーマからは外れてはいないが、かなりいろいろなジャンルがある。
なお、『別冊歴史読本』は週刊誌大のB5版の大きいサイズである。
安本作品が掲載されている『別冊歴史読本』を以下に記す。
1982.4.10 伝記シリーズ第23号 7-2 古代謎の王朝と天皇(図9)
安本作品は「卑弥呼は天照大御神か」である。
伝説化した卑弥呼の記憶が「記紀」編集の段階で、天照大御神のモデルとなった! と副題がある。
本号では白鳥庫吉、和辻哲郎、栗山周一など先人の「卑弥呼=天照大御神」説を詳しく紹介している。
最後に、平山朝治の最小自乗法による「天皇の即位年推定グラフ」を掲載する。
〈(グラフを見ても)やはり、天照大御神の時代は、卑弥呼の時代に重なりあうのである。〉という。
1986.1.10 歴史の謎シリーズ第6号 11-1 謎の歴史書『古事記』『日本書紀』(図10)安本作品は「卑弥呼はコンピュータによる記紀の分析」である。
まず、数理文献学とは何か、の説明から始まり、『日本書紀』の
暦日の研究、統計的年代論より、邪馬台国の年代を考える。〈(天皇の)平均在位年数を用いて、『古事記』『日本書紀』の天皇の
代数をもとに、数理統計学的な方法で、誤差の幅をつけながら、
邪馬台国の女王卑弥呼の活躍していた時代は
わが国の史料に記されているだれの時期にあたるかを求める。〉結果は、卑弥呼の時代は「記紀」の天照大御神の時代と重なる。
最後に、『古事記』神話の地名の統計から、邪馬台国はおそらく九州にあったという結論を導き出している。
1986.10.10 眼で見る時代考証シリーズ第9号 11-7 天皇家系譜総覧(図11)安本作品は「「高天の原」はどこか」である。
記紀に描かれた天皇家のふるさとの所在は? と副題がある。
「高天の原」はどこか という諸説を紹介し、地上説、天上説、作為説の三つにまとめている。
結論として、新井白石流の地上説が他説におとらない合理性と実証性をもつと考え、自身はこの立場にたつとしている。
1990.11.4 眼で見る時代考証シリーズ第9号 11-7 天皇家系譜総覧【改訂版】安本作品は「「高天の原」はどこか」である。
本号は、「歴代天皇全系譜」に第125代今上天皇を追加している。
他は、1986年版と同じである。
『歴史読本特別増刊』は、あるテーマを基に、既存の論文を集めたものである。当館所蔵では、「日本人の起源を探る」、「日本国家の起源を探る」の2冊がある。
『歴史読本』には、臨時増刊もあるが、こちらは通常の本の一冊の増刊号である。
なお、『別冊歴史読本特別増刊』と名付けられた本もあるが、こちらは『別冊歴史読本』に含まれる。
別に、季刊の辞典シリーズ、時代小説、スペシャルなどもある。
なんとも、まぎらわしい。分類が曖昧で、はっきりしていない。
ただし、本の内容はそれぞれすばらしい。
1994.1.10 シリーズ「日本を探る」1 39-2 日本人の起源を探る(図12)安本作品は「日本語の起源」である。
複数の異質な言語が流れを込む と副題がある。
本作品は、『科学朝日』48-2 1988年 所収の論文である。
日本語はどこから来たかの問題に対して、古極東アジア語を設定する。
基本語彙の比較より、日本語の形成は系統論ではなく、流入論となる。
日本語は5段階にわたって各地の言語が流入して、形成されたという。
以上、『別冊歴史読本』と『歴史読本特別増刊』に掲載されている安本作品を紹介した。多分、これ以外にも安本作品の掲載されているものがあると思われる。
運よく巡り会えたら随時紹介するつもりである。
「コンピュータによる記紀の分析」を以下に掲載する。
挿図 9:『別冊歴史読本』(伝記シリーズ23/7-2・1982・新人物往来社)の表紙挿図10:『別冊歴史読本』(歴史の謎シリーズ6/11-1・1986・新人物往来社)の表紙
挿図11:『別冊歴史読本』(目で見る時代考証シリーズ9/11-7・1986・新人物往来社)の表紙
挿図12:『歴史読本特別増刊』(シリーズ日本を探る1/39-2・1994・新人物往来社)の表紙
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