館長だより 第127号
館長だより 第127号

安本作品 あれこれ(28)

2019/01/27

   ☆『歴史と旅』に安本先生関連の15作品が掲載

 『歴史と旅』は、小学館および朝日新聞社(出版局所属)の元社員であった秋田貞夫が創業(1948年)した秋田書店発行の月刊誌である。

 創刊号は、1974年(S49)1月号である。

 特集は、「織田信長―天下布武の旅」を企画している。

 その創刊号のなかには、松本清張と江上波夫の対談「倭人国と騎馬民族王朝」が掲載されている。

 『歴史と旅』は、古代史から明治維新・太平洋戦争まで日本史全般を対象としている。

 新人物往来社の『歴史読本』と双璧を為す歴史専門雑誌である。

 ただし残念なことに、『歴史と旅』は月刊・増刊含めて439冊が刊行されたが2003年に休刊となっている。


 この『歴史と旅』には、安本美典先生関連の作品が15点ある。

 まず第1番目は、1975年5月号の安本論文「卑弥呼は誰か―天照大御神」である。

 《天皇の在位年数から推定して卑弥呼と存在年代が重なり合うのは天照大御神である!》

 と、副題にある。

 安本先生の邪馬台国問題研究の原点がここにある。

 他の論者のいう倭迹迹日百襲姫、神功皇后、倭姫の諸説を、安本論文がすべてを駆逐している。


 圧巻の号は1984年8月の臨時増刊号である。

 この号には、4篇の関連作品がある。

 (1)謝銘仁と張明澄による特別対談「魏志倭人伝の読み方、日本人のここが間違っている」で司会/安本美典である。

 (2)謝銘仁・張明澄氏 対談の司会を終えて 安本先生の総括がある。

 (3)同年6月に福岡で行われた「魏志倭人伝シンポジウム」での基調講演。
    「倭人伝」と「記紀」の語るもの

 (4)シンポジウムのパネルディスカッションでの発言

 司会、総括、講師にパネラー、なんでもこなす活躍に、安本先生の古代史研究に対する熱き血潮を感じる。


 知りえた作品中で一番新しいのは、1999年(H11)3月号の「梅山古墳に眠るのは欽明天皇か」である。

 先生の研究対象は、邪馬台国時代に限らず、王陵古墳の被葬者解明まで範囲が広がっている。

 どこまで伸展するのか、驚きであり、愉しみでもある。


 以下に『歴史と旅』(秋田書店)に掲載されている15作品の一覧を示す。

 一覧中の〔 〕は特集や企画の題目である。

 ここにある作品をすべて掲載することはできないので、私の一存で一つだけ文末に掲載する。

 安本先生が〔魏志倭人伝シンポジウム〕で講演された”「倭人伝」と「記紀」の語るもの”である。

 ここに示す作品群は私の知りえた範囲のもので、まだまだ漏れているものがあると思われる。

 ご存知の方には、是非メールにて教えていただきたい。

 よろしく、お願い申し上げます。


1975.5月号(2-5)(17)〔卑弥呼は誰か〕天照大御神
1976.6月号(3-6)(30)〔特集 邪馬台国はここだ!!〕甘木―数理文献学による証明
1978.1月号(5-1)(49)〔特集 異説!!日本古代史〕卑弥呼は天照大御神である
1982.1月号(9-1)(101)古代の天皇 21代雄略天皇
1983.7月号(10-9)(123)〔コンピュータで分析した二つの邪馬台国〕邪馬台国は福岡県・甘木
1984.8.臨時増刊号(11-11)(140)特別対談 謝銘仁・張明澄 魏志倭人伝の読み方、日本人のここが間違っている 司会/安本美典
1984.8.臨時増刊号(11-11)(140)謝銘仁・張明澄氏 対談の司会を終えて
1984.8.臨時増刊号(11-11)(140)〔魏志倭人伝シンポジウム〕「倭人伝」と「記紀」の語るもの
1984.8.臨時増刊号(11-11)(140)〔魏志倭人伝シンポジウム/魏志倭人伝に東アジア国際交流の姿を探る!!〕
            パネル・ディスカッション/榎一雄・安本美典・山尾幸久・奥野正雄、司会/豊田有恒
1985.1月号(12-1)(145)〔邪馬台国に至る国ぐに〕邪馬台国―深いナゾにつつまれた女王卑弥呼の都する国
1989.2月号(16-3)(216)神話の世界と邪馬台国―記紀の伝える高天の原こそ邪馬台国の神話的伝承とみる根強い史観!!
1992.11.臨時増刊号(19-17)(284)〔古代の謎と異説〕卑弥呼は天照大御神である
1995.6月号(22-9)(332)〔特集 神武天皇は実在した〕 神武東征伝承の再検証
1996.12月号(23-18)(359)〔最新情報 邪馬台国は大和だ〕邪馬台国の基礎データからみる大和説・九州説
1999.3月号(26-4)(399)〔王陵の里に眠る被葬者たち〕梅山古墳に眠るのは欽明天皇か


 上記の中で、唯一1982年1月号を私はまだ見ていない。

 こちらの号をお持ちの方はぜひ見せていただきたい。

 重ねて、お願い申し上げます。


『歴史と旅』(1984年8月臨時増刊号)「魏志倭人伝シンポジウム」での基調講演
「「倭人伝」と「記紀」の語るもの」を以下に掲載する。

 【1 P320-P321】  【2 P322-P323】  【3 P324-P325】  【4 P326-P327】


  挿図上:『歴史と旅』(1975年5月号)の表紙

  挿図中:『歴史と旅』(1984年8月臨時増刊号)の表紙

  挿図下:『歴史と旅』(1999年3月号)の表紙


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