先日、「邪馬台国の会」創立35周年の記念講演会が行なわれた。演題は、安本美典「私の邪馬台国研究50年の旅」である。
話は安本先生の生い立ちから始まる。
先生は、1934年に満州の四平街で生まれ、鞍山で終戦を迎え、翌年、引き揚げて岡山に住む。
高校生時代に、波多野完治『文章心理学入門』を読み、感銘を受ける。
文学や言語の分析を科学の方法で行なうことに興味を覚え、統計や確立に出会う。
京都大学文学部哲学科に合格し、心理学を専攻する。
先生の研究は、ここからはじまる。
京大に在学中に、「計量国語学会」が設立され、その機関誌に自身の研究成果の幾多を投稿する。
投稿原稿は、創刊号をはじめ、いくつかが掲載される。
京大卒業の翌年、処女作「文章心理学の新領域」(1960)が東京創元社より出版される。
文章心理学の自身の方法を、先生が確立したといえる。
その成果を、朝日新聞に掲載する。
「文学と数学の結合」−推計学による「源氏物語」の分析(1961.9.9朝刊)である。(図右)
研究成果の刊行は以降も続く。『創作の秘密』(1963・誠信書房)、『文章心理学入門』(1965・誠信書房)、『文章心理学の手びき』(1965・川島書店)などである。
海外からは新しい統計数学の情報が続々と伝わってくる。アメリカの心理学者シェルドンが因数分析法によって、人間の性格を分類しているという。
先生は、その因数分析法によって日本の現代作家百人の分類を試みる。
新しい方法への開眼である
その思いが、朝日新聞(1965.6.29)の夕刊に載る。
「〔研究ノート〕文学作品の数学的分類」である。(図左)
この研究は、先生の博士論文「心理測定のための因子分析法の理論的・実証的研究」へと結実する。
そして、本多正久氏と共著の『因子分析法』(1981・培風館)へとつながる。
先生の文章心理学研究の足跡をたどると、朝日新聞の二つの記事が、研究道の一里塚のように思えてくる。先生の文章心理学研究の深化発展の画期の時に新聞記事が掲載されているといえる。
なお、掲載記事の中央は、読売新聞の「日本語の起源と形成」(1972.7.20)である。この記事は、すでに第62号で紹介しているので、説明は割愛する。
ただし、第62号では1972.7.28掲載であり、見出しも少し異なる。文章は同じである。
たぶん、配布地区か、印刷版が異なるためと思われる。
三つの記事の拡大図は、以下に掲載する。
挿図:三紙の安本美典記事(「邪馬台国の会」創立35周年の記念講演の資料より)
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