館長だより 第123号
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館長のつぶやき(26)

2018/09/16

   ☆ 寄贈本 『コペテン!邪馬台国』

 「邪馬台国の会」の会員である村山智浩氏よりご自身の著作をいただいた。


 村山さんは、会の千葉支部の講演会での常連であり、顔なじみである。

 その上、全国邪馬台国連絡協議会と日本歴史学会にも所属されている。

 村山さんが邪馬台国に関して研究されていることは知っていたが、研究成果をまとめられて出版とは知らなかった。

 出版は、素晴らしい慶事であり、お祝いを申し上げる。おめでとうございます!

 そして、当館への寄贈に感謝し、お礼を申し上げる。ありがとうございます。


 書名のコペテンとは「コペルニクス的転回の考え方で「魏志倭人伝」の通説に切り込んだという村山さんの意欲を表現している。

 卑弥呼の遣使の「二、三年問題」では、倭人伝にある漢数字は70ヶ所以上あるのにここ以外は何ら問題ないという。

 こんなケースで、誤写を根拠に挙げるのはおかしいと氏はいう。

 初めて目にする鋭い指摘である。


 「短里」という仮想単位は重罪という。

 倭人伝に侏儒国の記述がある。人の背丈は三、四尺とある。

 短里を中国尺斤法に基づき計算すると、身長は約20pとなるという。

 中国正史がそんなデタラメを残しているんですか?と本の帯にある。

 侏儒人の身長を取り上げた人は見たことがない。


 村山さんが違和感を覚えるのは、「魏志倭人伝」の不可解な行程についてである。

 ”私が梯儁や張政らの魏人を案内するなら、基本、最後の最後まで陸路は使わない。”

 末盧国で上陸した魏の一行は、伊都国の港で検閲を行なう。

 なぜ、必ず伊都の港へ行くならば、直行しないのだろう。

 その後、邪馬台国へは水行・陸行をする。

 最後の陸路は必然としても、途中の九州をなぜ陸路で行かなければならないのでしょうか?

 村山さんは、これを不可解という。


 いままで、漫然と見過ごしていたことを一つ一つ洗い出し、新しい視点から考察を加える。

 本書には目からウロコの解説が満載されている。

 邪馬台国の迷路に迷い込んだ人には、必読の本ではないだろうか。

 ご興味のある方は、どうぞご覧ください。


  挿図:村山智浩『コペテン!邪馬台国〜論理と常識の果てに』(2018・文芸社)の表紙、帯付き


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