館長だより 第12号
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館長のよもやま情報(1)

2012/07/01

   ☆ 国会図書館の邪馬台国論争 展示資料

 旧聞になるが、国立国会図書館が邪馬台国論争と題して蔵書資料の展示をしたことがある。

 第85回常設展示 「邪馬台国論争」 (H10.1.7〜1.23)である。

 展示についての趣旨説明を引用する。

 ≪“邪馬台国”―中国の書物「魏志倭人伝」に記された日本の古代の国をめぐり、江戸時代以降、様々な論争が繰りひろげられてきました。
 当初、一部学界の関心事であった邪馬台国論争は、現在では多くの人々の注目を集めるようになり、新たな発見があるたびに新聞紙上を大きくにぎわしています。
 しかしながら、今なお、数々の点で解決をみていません。
 果たして邪馬台国はどこにあり、その女王、卑弥呼はどのような人物であったのでしょうか。
 今回の展示では邪馬台国の研究史を概観しつつ、論争についての資料を中心に紹介します。≫

 展示資料として、関連書籍を5グループにわけ、全体で33件34冊(29は上下2冊)を選んでいる。

 書籍名、論文名のみを掲載する。

 【魏志倭人伝の世界】

   1.「三國志」三 2.「全訳 魏志倭人伝」 3.「邪馬台国ハンドブック」


  【邪馬台国論争】

    4.「古史通或問」 5.「馭戎慨言」 6.「卑弥呼考」 7.「倭女王卑弥呼考」
    8.「東洋史上より観たる日本上古史研究」 9.「狗奴国考」
    10.「漢籍に見えたる倭人記事の解釈」 11.「卑弥呼即ち倭迹迹日百襲姫命」
    12.「考古学上より観たる邪馬台国」 13.「古鏡の研究」 14.「鑑鏡の研究」

  【戦後の邪馬台国論争】

    15.「邪馬台国の位置について」 16.「新稿日本古代文化」 17.「埋もれた金印」
    18.「日本古代国家成立史の研究」 19.「国家の発生」 20.「神話から歴史へ」
    21.「日本の古代国家」


  【邪馬台国研究の新視点】

    22.「邪馬台国」 23.「魏志倭人伝に描かれた日本の地理像―地図学史的考察」
    24.「古墳時代の研究」 25.「日本の古代文化ー古墳文化の成立と発展の諸問題」
    26.「三角縁神獣鏡」


  【広がる邪馬台国への関心】

    27.「古代史疑」 28.「まぼろしの邪馬台国」 29.「鬼道の女王卑弥呼」上・下
    30.「吉野ヶ里」本文編 31.「卑弥呼の世界」 32.「鏡の時代 銅鏡百枚」
    33.「倭国 邪馬台国と大和王権」


 選ばれている本は、研究の基本である「魏志倭人伝」から、雑誌に掲載の研究論文、文献史学での研究、考古学成果による研究や小説、展示会の図録まで広範囲から集められている。その姿勢に感心する。

 私が所属している「邪馬台国の会」の主宰である安本美典氏の著作「邪馬台国ハンドブック」が選ばれていることはうれしい。

 ここに掲載した題名を見ただけで著作者名がわかるには、研究歴の長さが物を言いそうである。

 さて、わが邪馬台国図書館の蔵書にこれらの本がいくつあるか、それが私の関心事である。

 34冊中17冊あった。

 1、2、3、16、17、18、19、20、22、24、26、27、28、29、30、31、33 である。

 ちょうど、半分である。これをまあまあとみるか、少ないと思うかは、ムズカシイところである。

 未所蔵のうち8冊は専門雑誌である。一般人にはちょっと集めにくい。

 しかし、そのうちの7論文は佐伯有清編『邪馬台国基本論文集』T、U(創元社・1981)に収録されている。

 この本はあるので、現本がなくても、全文が見られる。

 これも加えると24冊となる。

 それにこの資料一覧を知ってから、21、25をネットで注文したので、本が届けば総数26冊となる。

 邪馬台国図書館が一般にオープンされたときには、少しはみなさんのお役に立てられるのではないかと、密かに思っている。


 今回紹介した第85回常設展示 「邪馬台国論争」の詳細はネットで見ることができる。

 各論文についてそれぞれ説明文が付いている。

 興味のある方は「邪馬台国論争」をどうぞ。


  写真1:中華書局『三國志』三 (魏書 三) (新華書店北京発行所・1973)の表紙(1)

  写真2:『歴史読本』29-14 (新人物往来社・1984.9)の表紙(2)

  写真3:安本美典『邪馬台国ハンドブック』(講談社・1987)の表紙(3)

  写真4:和辻哲郎『新稿 日本古代文化』(岩波書店・1951)の表紙(16)

  写真5:藤間生大『埋もれた金印』(岩波書店・1950)の表紙(17)

  写真6:上田正昭『日本古代国家成立史の研究』(青木書店・1959)の箱表(18)

  写真7:井上光貞『日本の歴史 1 神話から歴史へ』(中央公論社・1965)の箱表(20)

  写真8:小林行雄『古墳時代の研究』(青木書店・1961)の箱表(24)

  写真9:王 仲殊『三角縁神獣鏡』(学生社・1992)の箱表(26)

  写真10:松本清張『古代史疑』(中央公論社・1968)の箱表(27)

  写真11:宮崎康平『まぼろしの邪馬台国』(講談社・1967)の表紙(28)

  写真12:黒岩重吾『鬼道の女王 卑弥呼 上』(文藝春秋・1996)の表紙(29)

  写真13:黒岩重吾『鬼道の女王 卑弥呼 下』(文藝春秋・1996)の表紙(29)

  写真14:大阪府立弥生文化博物館『卑弥呼の世界』(大阪府立弥生文化博物館・1991)の表紙(31)

  写真15:京都国立博物館『倭国 邪馬台国と大和王権』(毎日新聞社・1993)の表紙(33)

  写真説明の文末( )内番号は展示資料の番号。

  19、22、30の所蔵はまちがいないが、ちょっと見つからないので写真は割愛。


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