館長だより 第111号
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館長のつぶやき(24)

2017/12/24

   ☆ 寄贈本 『邪馬台国への路を推理する』

 突然、一面識もない方からメールが届いた。

 「邪馬台国図書館」に自身の著作を寄贈してくださるという内容である。

 メールの発信人は、酒井正士さん、「全国邪馬台国連絡協議会」の会員とある。

 全邪馬連のHPには、「邪馬台国図書館」の紹介がある。

 それをご覧になってのお申し出かもしれない。

 何はともあれ、うれしい。

 市井で頑張っている研究者の著作は、その情報が少なく、入手が難しい。

 著者自身からの申し出が何よりもありがたい。

 早速、送っていただいた。

 酒井正士著『邪馬台国への路を推理する』(2017・ブイツーソリューション)である。

 「要旨」に酒井さんの研究前提、方針、目的が書かれている。

  〈魏志倭人伝中の距離と方向に関する記述をできるだけ忠実に扱うことを念頭に、
  下記の前提のもとに邪馬台国の所在地の特定を試みた。
  @魏志倭人伝中の「距離と方向」は主に魏使の派遣に先立つ情報に基づくもので精度は高い。
  A狗邪韓國出航から末盧國上陸までに登場する海上の「千餘里」は直線距離を意味する。
  B古代中国の天文数学書「周髀算経」の記述に基づき「一里=77メートル」とする。〉

 酒井さんは三前提に忠実に従いながら、ジグソーパズルのピースを一つ一つ、はめていく。

 作り上げた行程図は「魏使は洞海湾に上陸し別府を目指した」となる。

 そして、邪馬台国にたどり着く。

  〈「邪馬台國」は不彌國の東南に広がる国東半島から別府市、場合によっては
  大分市にかけての大分県東北部一帯であり、宗教拠点は宇佐市、都は別府市周辺〉という。


 著者プロフィールによると、酒井さんは1955年東京生まれで、東京大学卒の農学博士である。

 歴史とは異なる分野の研究をされて来ている。そして歴史が大の苦手だったと書かれている。

 それが、高木彬光の『邪馬台国の秘密』に出会い、突然、邪馬台国所在地の解明に目覚めたという。

 酒井さんは独自に研究を始め、試行錯誤の上、魏使の上陸地を洞海湾沿岸の枝光付近とする。

 自身の仮説の検証作業には、グーグルマップをはじめ、Konest韓国地図や伊能忠敬の伊能地図を使用している。

 その上、立体的な航空写真も手に入れ、移動距離、コースの検証をしている。

 その発想、手段がユニークで、とても興味深い。

 その酒井さんの労作が当館の蔵書に加わった。うれしい限りである。


 今、アマゾンで『邪馬台国への路を推理する』を検索すると、Kindle版が¥ 270で読める。

 ご興味のある方は、どうぞ。


  挿図上:酒井正士『邪馬台国への路を推理する』(2017・ブイツーソリューション)の表紙

  挿図下:魏使上陸地点と伊能地図の洞海湾の図(上記本より)


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